脱線or迷走 [思うこと]
そういえば、種をまいたのは私だった。
いろんな人から声がかかる。
最近どうしたの。
いつまで冬眠しているの。
もうとっくに春だよ。
帰郷して10年。
このままでは、どうにも腐ってしまいそうだった。
どうしたって自分を追い込みたかった。
人前に出ることばかりに労力を割いていた去年とは違い、
今年は年明けから殻にこもった。
心身ともに近しかった友人たちがこぞってママになり、
女として次のステップへまい進していく姿に戸惑い、
当然ながら取り残された感満載で、
でも自分は同じ道を行けないのだと再確認して、
結果、途方に暮れていた。
音楽ができるからいいじゃないかと言ってくれる人もいるけれど、
「音楽しかできないんです」と答えるのにも正直飽きていた。
ほんまにそれしかできんのか！
ということで、思い切って違う生き方をしてみた。
工場へ働きに出たのだ。
毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に家を出て、
同じ道を通って、同じ人たちと同じ仕事をする。
それは時間に律せられた世界。
作業した分、きっちり目の前に完成品が並ぶ。
通勤ラッシュや、全身真っ白い作業服。
エコとはほど遠い衛生観念で、
マスクや手袋は使ったそばからどんどん捨てて、
消毒、消毒、また消毒。
15分で着替えとトイレと水分補給を済ませる慌ただしい休憩、
息も切れそうなほどの肉体労働、速さや数字との戦い。
すべてにおいて、初体験。
時間きっかりに終わって、
身体が空っぽになって、朝来た道をまた帰る。
そんな毎日をくり返してみた。
平日と週末という概念が芽生えた。
ピアノを教えながらなので、週末も休日ではないのだけれど、
それでも明らかに、
金曜の夜には開放感を覚えた。
犠牲にする平日と、解放する週末。
規則正しく、同じことをくり返すことの重要性。
そして、納得した。
私なんかでもできた、ということ。
音楽以外にもできた、ということ。
だけれども、
きっと、
いやたぶん、
私じゃなくてもいい、ということ。
大いに納得しました。
幸運なことに、
親世代の先輩たちには体育会ノリでかわいがってもらえたし、
同期のみんなとも友だちになれた。
外に出て、どこかに属して働く人たちのことを、
初めてちゃんと考えた。
毎朝同じ信号で並ぶ車。
渋滞のいら立ち。
おにぎりをほおばるひと、化粧をする人、煙草を吸う人。
橋の上から見える絶景。キラキラの海や遠くの山。
祝日で道が空いているとラッキー、とか、
予定より早く着きそうだからコンビニに寄ろう、など、
朝のエピソードだけでも、いくつも体験できた。
何も知らずに、
彼らに共感してもらえる歌を必死で書こうとしていた自分が、
今じゃ少し恥ずかしい。
目指す方向が分かっているのにも関わらず、
真逆へ振り切らないと進めない性格。
35年も相手をしているけれど、
我ながらマジめんどくさい。
でも、この歳で、この発見には大きな意味がある。
なんせ、納得してしまったのだから。
そういえば、種をまいたのは私だった。
他の誰でもない、この私。
10年、いろんな場所で歌って、
いろんな人と繋がって、
そして少しずつ、確実に得たもの。
よく見なさい。
芽は出ているよ。
というわけで、ちゃんと水をやります。
音楽人に戻った今、
自分がまいてきた種がどんな枝葉を広げ、
どんな花や実をつけるのか、最後まで見届けます。
みんなもいろいろ忙しくて大変なのに、
余計な心配をかけてごめんなさい。
でも、本当にありがとう。
声をかけてくれて、嬉しかった。
メールでのメッセージや、
昔の教え子から手紙がきたりなんかもして、
本当に嬉しかった。
何かに気づく時って、情けないけどいつもこんなだね。
脱線ならば、止まってしまう。
再び同じレールに乗ろうとするには、
納得する以上の諦めが必要。
でも迷走ならば、
軌道修正すればいい。
まだ動くなら。走れるのなら。
迷走はもっと長く続くんじゃないかと思ってた。
今まで以上にいろいろと考えられたこと、絶対に今後の実になる！
進化したnaominの生歌を聴ける日を待ってるよ。
by まろやぎ (2014-04-23 09:45)
*まろやぎ
私もそのつもりだった；
でも、種まきしてきたこの10年を
なかったことにする勇気がない；
必死で前進しようとしています！
by Naomin (2014-04-24 14:39)
ありがとうございます
思った以上に早かった復帰を、非常に嬉しく思っています。
ひょっとしたら帰って来ないかも・・・と不安に思っていました。
風船蔓を何回も聞いて、何度も色々な事を思い返していました。
良かった・・・本当に良かった。
色々な経験が、音楽に繋がると思います。
今まで上辺でしか感じられず、想像だったものが、現実の言霊になって私たちの心に届くと思います。
歌い続けて下さい。
あなたの歌に、あなたの声に焦がれています。
あなたの歌を元気の源にしている私たちの事にも思いをはせて下さいね。
ありがとう～！
by 竹ちゃんマン (2014-05-09 19:17)
*竹ちゃんマンさん
こちらこそ、心配かけてすみませんでした。
たぶん、いろんなことが重なって、重くなって、
いっぺんドカーン！とひっくり返したかったんだと思います。
もう一度、音楽の力を信じようと思います。
これからもどうぞよろしく！
by Naomin (2014-05-11 23:24)
ご無沙汰しています。いろんな葛藤があっての決断だったんですね。でも勤務されたなかで、そんなにいろんな事に気づかれたのが素晴らしいなと思いました。時間に追われる毎日でしたが、きちんと働いた分のお給料は有り難いですよね♪ふっ切れてほんとに良かった！(^^)これからも頑張ってくださいね♪また、会いに行きまーす！
by くまの (2014-05-14 01:14)
*くまのさん
わー。ご無沙汰です！
噂では今も行ってらっしゃるとか。
非力でマイペースで、なんとも頼りなかった私でしたが、
いい経験できたと思います。
またライブ来てください！
by Naomin (2014-05-14 22:41)